〈今日の一枚と一句〉「その21(2024.12.10~)」

【 冬麗 蓮の襖も 浄土かな 】(ふゆうらら はすのふすまも じょうどかな)
 天台宗「青蓮院門跡」(京・東山区粟田口)「華頂殿」を訪ね、しばし庭園を眺めてきました。
 ここは、比叡山延暦寺の三門跡のひとつ、平安時代から明治に至るまで、門主は殆どが皇族であり「蓮如上人」もここで得度を受けられたとか。

 この日は、初冬の厳しい京都特有の寒さは感じられず、麗らかな一日、ゆっくりと散策することが出来ました。(極楽極楽~!)

 なお、庭園は池泉回遊式(小堀遠州作)の「霧島の庭」があり、門前には親鸞聖人お手植えの「楠」の銘木(千年を超える)があります。

京都にお出かけの際には、拝観箇所としてお薦めします。(一部工事中の箇所がある他、日時によっては拝観人数が多く、相当混雑することもあります。

※1「冬麗」: 物みなほっこりと陽の光にほっとする感じ
※2「蓮の襖」: 「青の幻想」「生命賛歌」「極楽浄土」がテーマの襖絵
※3「浄土」: 一切の煩悩やけがれを離れた清浄な国土、仏の住む世界、極楽浄土

《2024.11.28撮影・12.10投稿》

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【 雪吊も 手持無沙汰や 冬晴るる 】(ゆきつりも てもちぶさたや ふゆはるる)
初雪を記録した金沢、とたんに「霰」が降り「雷」や「強い雨」の襲来を受けた金沢市内、しかし、今日は朝から陽が射して・・・。

 実測気温は別として、青い空や陽の光を浴びると気分も良く少し温かく感じます。
 兼六園の「雪吊り」や武家屋敷跡の「薦掛け」作業もほぼ終わり、本格的な雪への備えが出来たようです。

 この時期、日本海側の天候としては珍しいくらいに、静かで穏やかな中、朝日を拝むことが出来ました。

 金沢城の南側に位置する「いもり掘り」方向から、(兼六園の入り口は7か所ありますが、その内のひとつ)「真弓坂」の雪吊り2本が見えます。
雪吊りも、少し緊張感がほぐれたと言うか、「手持無沙汰」のような様子に見えたので、「パチリ!!」ました。

※1「雪吊り」: 先の投稿文参照
※2「手持無沙汰」: やることがないこと、所在ないことの意
※3「冬晴るる」: 冬の季節の晴れた空、厳しい中に印象鮮明な様子(「手持無沙汰」という緩さとの対比‥言葉の遊び)

《2024.12.10撮影・投稿》

 

【 せかせかと 人は動けど 月冴ゆる 】(せかせかと ひとはうごけど つきさゆる)
 師走に入り、特に日本人は正月を迎える前に何かを済ませるため?にと忙しく動きまわる独特の様子・・毎年繰り返されます。

 年内中に済ませる予定の仕事や、支払い、片付け、大掃除、年賀状・・・次々と思い浮かんできて・・・。しかし、時間は刻々と過ぎてゆきます。

 夕方4時過ぎに空を見上げると、凛とした月が、辺りに雲もなく浮かんでいて、澄み切った東の空に早々と顔を見せてくれました・・・。冷えた大気の中だから見える澄んだ月の姿、ことのほか綺麗でした。

 別の機会には「星冴ゆる」と表現する夜の一句も詠めそうですね。

※1「せかせかと」: 動作や言葉がせわしなくて落ち着きのない様子
※2「月冴ゆる」: 文中記載のとおり。冬の季語

《2024.12.10撮影・12.11投稿》


 
 

【 冷たさや 寺の紅葉と 鹿手水 】(つめたさや てらのもみじと しかてみず)
 紫式部は京・大原野神社(西京区大原野南春日町)を氏神様と崇め、係る歌も詠まれたとのこと、訪れた時は紅葉が見頃で、空も青く澄んでとても綺麗な境内でした。

 越前の国にやってきた式部が詠んだ「ここにかく 日野の杉村 埋む雪 小塩の松に 今日やまがへる」・・・ここでの雪景色をみて「都でも小塩山の松に雪がちらちら散り乱れて降っていることであろう」と・・・。

 小塩山の麓に鎮座する「大原野神社」の存在を大切に思われたからだと、ものの本に書かれていました。

 紅葉の名所でもあるこの神社、「鯉沢の池(こいさわのいけ)=モネの睡蓮の池」や「鹿の狛犬=鹿(神のお使い」も他の神社には見られないところ、ちょうど結婚式が執り行われているところでしたので、境内の景色以外にも沢山のシャッターチャンスに恵まれた時間帯でした。

※1「鹿手水」: 春日大社(ふせ鹿の手水)が有名ですが、ここは大原野神社の手水
※2「「鯉沢の池」: 「左大臣藤原冬嗣を祖父とした第五十五代文徳天皇は、壮麗な社殿と共に鯉沢の池をも作った。池は名泉 瀬和井(せがい)と推計を一つにして杜若や睡蓮を咲かせ親しまれている・・・」と立て看板に記されている。
※3「鹿手水」: 鹿は手水鉢の横に鎮座していて、奈良のお寺に見かけるが京都では珍しい鉢かと

《2024.11.29撮影・12.12投稿》

 


【 かさこそと 紅葉散りそむ 城と庭 】(かさこそと もみじちりそむ しろとにわ)
 京都二条城の本丸御殿公開記念「秋の豊穣際」については、先に一部投稿(12.02)しましたが、その続編です。

 訪れた時は、紅葉が散りはじめ、入城はライトアップの時間帯であり、とても寒く
散った紅葉を踏む音、枯れ葉が枝から地に落ちてくる音、風に舞う音・・・「かさこそ、かさこそ」との表現が最も当てはまるかと・・・。

 築城・徳川家康公入城から大政奉還までの間、この城内には「盛衰の表と裏」、政治の中心となった人物達が繰り広げたであろう「決断」、奉還に至るまでには幾多の苦難があったことでしょう。

 「紅葉」が枯れ落ち、北風にあおられ、時に舞い上がり、また落ちて・・・。
 「散りそむ」のは、「城の庭」とせず、「城」と「庭」と詠みました。

 ちなみに、名刀と名高い「刀剣」が城内に展示・公開されているエリアで「来國俊=らいくにとし」(日本刀の刀工:来派で鎌倉時代から南北朝時代にかけて山城国で活動)作の刀に「前田侯爵所蔵」と、金で銘打たれた「一振り」がありました。

 「本刀の伝来は、豊臣秀吉から徳川家に入り、徳川家光から前田家に譲られて、明治以降に至ることが記録されている」との説明文が付されています。

※1「かさこそ」: 干乾びた木の葉(紅葉)が触れて発する微かな音の意
※2「散りそむ」:「ちりそ・む」、「散り初む」、「散りはじめる」様
※3「大政奉還」: 先に投稿の記述参照

《2024.11.28撮影・12.13投稿》




 

【 化山水 紅葉を添えて 西の京 】(かさんすい もみじをそえて にしのきょう)
西の京・光明寺の勅使門前には、大小18個の石を配したお庭「信楽庭(枯山水)」があり、その近辺の木々が綺麗に紅葉しています。

 「信楽庭=しんぎょてい」の「信」は信ずる、「楽」は願うこと・・つまり「信じ願えば必ず救われる」との教えであると、同寺の説明書きにありました。

 枯山水のお庭と向かいあう(修行の厳しい)僧にとって、この時期は、朱色に染まる紅葉が彩を添えることで、四季の庭の景色の中でも、他の景色とは異なり、時にふっと・・・・・・心のどこかに安らぎ?・・・が生まれてくる景色なのかも~・・と、勝手に想像してしまいました。

 ちなみに、「勅使門」は、朝廷からの勅使参向の時、勅使の通行に使われる門で、万延元年(1860年)に建造され、平成になってから修復されたとのこと。

※1「仮山水」: 「枯山水(かれさんすい)」「故山水(ふるさんすい)」などの呼び名があり、英語では「Zen garden」や「dry garden」などの表現方法がある
※2「光明寺」: 先に投稿の説明参照

《2024.11.29撮影・12.14投稿》


 

【 雪吊や ビルの谷間に 二つ三つ 】(ゆきつりや びるのたにまに ふたつみつ)
 JR金沢駅・兼六園口(東口)に路線バスの乗降場があります。
 バスが乗り場に向かうためのロータリーとなる場所の真ん中に植林の低木にも施された本格的な「雪吊り」、ここまで背を高くし頑丈な仕掛けが必要とは思えないほどの立派な造り・・・。

 周りは高層のビルに囲まれており、ビルの谷間風の影響はあるものの、これによって降雪の際は、降る雪が吹き飛ばされてしまうかとも・・・撮影スポットとしてもあまり目立たない所(11番乗り場)でもあることから、ちょい不思議に思って「パチリ!!」ました。

 目立たない所にも施される伝統の技、これが加賀の職人のなせる業なのかも知れませんね。

※1「雪吊り」: 先に投稿の説明文参照
※2「ビルの谷間」: 金沢駅、商業ビル、ホテル群に囲まれた様

《2024.12.14撮影・12.15投稿》

【 宮向こう ひゃくまんさんの 冬安居 】(みやむこう ひゃくまんさんの ふゆあんご)
 金沢市・尾山神社の真向かいにある「金沢中央観光案内所」(金沢市南町4-1)は、石川県内・金沢市内の観光スポット情報の展示や、関連パンフレットも沢山揃えられ、WiFiや外国語にも対応した案内サービスが受けられことから、多くの観光が訪れます。

 この施設内に、石川県の観光PRマスコット「ひゃくまんさん九谷焼人形」が展示されてます。

 説明書きでは、「県の郷土玩具「加賀八幡起上り」をモチーフとし、加賀友禅柄の菊や牡丹、色彩には赤・黄・緑・紺青・紫の九谷五彩を使用しており、琴柱灯籠、朝顔、加賀てまり、和菓子、紅葉、白山、加賀八幡起上り、能登のキリコ、金沢城・石川門などが描かれています。」とあります。

 赤い座布団に鎮座し、冬の修行(座禅)に入った「ひゃくまんさん」・・・といった姿にも見えてきました。(写真には、真向かいの「尾山神社」が少し写り込んでいます。)

※1「宮向こう」: 尾山神社=宮」の先にある菩提寺の「宝円寺」方向に向かうの意
※2「ひゃくまんさん」: 文中説明文のとおり
※3「冬安居」: 10月から1月にかけて約90日間、僧や信者が座禅や仏書の研究に専念する修行(雪安居とも言う)ただし、夏は単に「安居=あんご」と表現する。
※4「久谷五彩」: 文中記載の他、「五彩手」とも呼ばれる
※5「能登キリコ」: 能登地方で「伝統行事や祭り」に使用する直方体形の山車

《2024.12.16撮影・投稿》


 

【 樅飾り 赤を抑えて 加賀の宿 】(もみかざり あかをおさえて かがのやど)
  JR金沢駅前にある全国チェーンの大規模ホテル、ロビーに恒例のクリスマスツリーが今年も登場しました。

 いつもの年に比べ、キラキラ感や赤色が少ないデコレーションに見えます。
 やがて一年を迎える「能登半島地震」や「豪雨災害」に襲われた能登、同じ石川県内に起きた発災被災地・人達への心配りなのかとも・・・。

 クリスマスの飾りと言えば「赤」と「緑」、緑は永遠の生を表し、赤はキリストの血を表すとか・・・。
 ツリーの頂点を飾るのは、「ベツレヘムの星」といい、イエス・キリストの誕生を告げるものだとのこと。

 また、カラフルなボールは、アダムとイブが食べた「知恵の木の実」、つまり、リンゴを象徴する(金色は神聖さを、白は純潔、緑は命の再生・・・)と、それぞれ意味があるようですね。(今年、このホテルのツリー飾りは金色が特に多いと感じました)


※1「樅飾り」: クリスマスツリーの意
※2「加賀の宿」: 金沢にあるホテル

《2024.12.14撮影・12.17投稿》



 

 

 

 

【 雪囲い 飛び出し開花(咲く)や 黄色花 】(ゆきがこい とびだしさくや きいろばな)
金沢市尾張町の一角、江戸時代は参勤交代の際に通った道、大手門から北の方角に数十メートル進んだ所(旧中町辺り)にあるお店の門前に「雪囲い」が施され、これが植木に施されたデコレーションとしてすばらしく、直ぐ目に留まり、とても気になりました。

 お店の「門前飾り」の類ですが、そろそろ来るであろう積雪の悪戯から、大切にしている植物を守ろうとする、主の心配り?かとも・・・・。

 しかし、折角の「雪囲い」なのに、これを嫌うかのようにはみ出して咲いた黄色い花・・・しかも見た目の可憐さも加わり、また、とても綺麗です。
 季節的には花芽の少ない時期に、(紅葉ではない)彩色を楽しませてくれます。

 もちろん、四百五十年弱以前の風景(江戸時代)とは全く異なる景色とは思いますが、もしも、お殿様がこの場面を目にされたなら、「見事~!」とか、「あっ晴れ~!」のお言葉が貰えたかも~と・・・。

 そろそろ城下町のあちこちに冬・正月を迎える準備が着々と進んできたようです。

※1「雪囲い」: 降雪から植物や家屋を守るために施す囲い(稲藁製が多い)の一種
※2「飛び出し開花」: 囲いを嫌うかのようにはみ出して咲いた花のこと
※3「黄色花」: 「ツワブキ」の花ですが、季語がダブルので、あえて「黄色花」としました。

《2024.12.18撮影・投稿》



 

【 御祭り 加賀のお旅所 西の空 】(おんまつり かがのおたびしょ にしのそら)
奈良の一年を締めくくる伝統行事「春日若宮おん祭り」(例祭)が12月17日(火)に執り行われました。

 この祭りは、平安末期の保延2年(1136年)から900年近くの間一度も途切れることなく繋いできたとか。

 「天下泰平」と「五穀豊穣」、「万民和楽」願って始められたとのことです。
 
 北陸の天気予報では、ここ二三日前辺りから降雪を表す雪ダルマがちょくちょく現れてきてはいますが、金沢市内中心部にはまだ本格的な積雪はありません。

 西の空を見ると、右の光の塊に向って頭を垂れる神職の祈りのように見えました。
 辺りが夜のとばりと、夕暮れに微かに残る明かり、雲が複雑に表れた一瞬です。

 なかなか珍しい画であり、その一瞬を「パチリ!!」ました。

※1「御祭り」: 奈良春日大社のお祭り(例年12月17日頃)
※2「お旅所」: 神社の祭礼で、巡行の際に神様が休憩又はお泊りになる場所等
※3「西の空」: 金沢の日本海側(西側の空)の意

《2024.121.19撮影・投稿》

 

【 殿町の 湯から飛びだし 冬至柚子 】(とのまちの ゆからとびだし とうじゆず)
 昭和の終わり頃まで、旧町名の「中町」近くに「殿町湯」と言う名の銭湯があったという話をこの辺りの住人から聞きました。

 明日21日は「冬至」、この日に食する七草には「冬至七草」と言われる物があって、全てに「ん」が二つ付くもの。

 南京(なんきん=かぼちゃ)、人参(にんじん)、銀杏(ぎんなん)、金柑(きんかん)、寒天(かんてん)、饂飩(うんどん=うどん)・・・・。

 なんでも、「冬至」に「ん=運」を沢山取り組むという意味合いから食べるとのことですが・・・さてさて(^^;

「旧町名復活運動」の盛んな金沢ですが、ここの石柱には「旧中町」と表示されていました。
 この地名は「三壷記=みつぼき」にも書かれている町名で、「大手先=大手門の先」(で)「小坂下の竪町」で、城中から門(大手)をくぐって出る道路の本通りだったのでこのように呼ばれた・・・とか。(関連する書物から)

※1「殿町」: 先の投稿欄参照(旧町名)
※2「冬至柚子」: 寒い冬至(2024年は12月21日)に風呂の中に入れて暖まると風を引かず冬を乗り切れるとの習わし
※3「三壷機記」: 加賀藩に仕えた山田四郎右衛門(宰領足領)が著した通史のこと

《2024.12.20撮影・投稿》



 

【 数え日と なりて人なく 武家屋敷 】(かぞえびと なりてひとなく ぶけやしき)
今年も残り少なくなり、また連日スッキリしない空模様の金沢市内、先週辺りまでは団体観光客や家族連れで賑わっていた観光スポットの「武家屋敷跡」界隈、今日の土曜日、朝早かったからかもしれませんが、人影もなく、しーんとしていました。
 皆それぞれが年末の多忙な時、観光地を訪れる時間的余裕がない頃なのかとも。

 それにしても、各屋敷内に植林の木々から落ちる葉が多く、毎朝それぞれの玄関先やお店の前を掃き掃除されている場面に出会います。連日大変な作業だと・・・。

 今日は冬至、明日から本格的な降雪の予報が出ていますが、暖かい柚子湯にでも浸かり、日曜日も含めてゆっくりとした蓮休日としますかね・・・・・。

※1「数え日」: 年が押し詰まり、残りの日を数えるほどになったこと。
※2「武家屋敷」: 先に投稿の記事参照
※3「柚子湯」: 柚子のすっきりとした香りが心を落ち着かせ、肩こりや冷え性にも効果があるといわれる

《2024.12.21撮影・投稿》

 
 

【 雪吊りの 支えなくとも 立つ木あり 彩葉の枝の 逞しきかな 】(ゆきつりの ささえなくとも たつきあり いろはのえだの たくましきかな)
 金沢市長町の「老舗記念館」内にある庭木には、匠の技よろしく見事な「雪吊り」が相当早い時期から施されています。

 一方、同館の外塀に植林の木々には、雪吊りがなされた木々と、全くされていない木があります。
 なぜなのか、理由は判りません(もしかすると必要のない木なのかも?)が、塀垣傍の一本は、枝が相当切り落とされていて痛々しくもあり・・・・。

 しかし、しかし、雪吊りや薦囲い?にまで守られた木々は、もう既に紅葉後の葉もない状態になっている中、枝が相当切り落とされているにも関わらず、その枝には紅葉した葉が、まだしっかりと付いています。

 その色合いもさることながら、強い北風や降雪に耐えて、なお彩葉を残す逞しさに元気と勇気をもらいました。

※1「雪吊り」: 先の投稿記事参照
※2「老舗記念館」: 藩政時代からの薬種商「中屋」の建物を利用し伝統的町民文化を展示する施設
※3「その他」: 今日の投稿は「短歌風」にて失礼します

《2024.12.21撮影・12.22投稿》